第2回 アンサンブルは楽しいのだ2009/07/06 09:24

みなさん、こんにちは。斎藤雅広35歳です。私はアンサンブルが大好きです。アンサンブルと言うと私にとっては人付き合い(笑)。人によっては精緻で気難しく、重い芸術性を持ったものかもしれませんが、こちとらはかたいことを言いっこなし、楽しくてゴキゲンな時間を共有するためのものです。外国人の歌手や特にウィーン・フィルの関係の人たちとはほぼ同じ種族と言ってよく、共演は嬉しいお仕事です。特にクラリネットのシュミードルさんとかチェロのドレシャルさんは共演も多く楽しい。私がNHKの子供番組でキーボーズをやっている頃には、ウィーンでもちゃんと見れることもあって「あれに出たい!」みたいなことを言っていたぐらいです。本当にNHKの子供イヴェントにはシュミードルさんに出ていただきました。とぼけた熊さんのついたTシャツを着てノリノリでしたね。こういう温かなハートをもつ人たちが大好きです。

ウィーンの人たちとは定番の「鱒」もよくやりましたが、ただでさえ時間がなく事前のリハーサルができないのに、私の顔を見るなり「あ、今日はサイトウなのか。なら大丈夫」とゲネプロ(本番直前の会場リハ)もしないで遊びに行ってしまいました。でも本番は魔法のように、お互いどんなにテンポを揺らしてもピッタリ合って自由にやり放題。とても楽しいのです。ただ演奏中に曲中の繰り返しの部分に気がついて、にわかに「リピート?」「NO!」みたいな小声が一斉に飛び交うのはさすがにまずいと思うけど(笑)。そんな彼ら、某有名ロシア人ピアニストと共演してガッチリと弾かれてしまい「ロシアの鱒は川底で動かないらしい」と悲鳴をあげていましたね(笑)。やはり音楽の真髄は自由なファンタジーのやりとりですよ。そうでなくっちゃ。

日本人の多くが四角四面に、まるでガンジガラメに考えているドイツ歌曲のようなものでも、外国人の「リート歌い」と言われている人と共演すると、かなり自由なものを要求してきます。逆に表では言わないけれど「日本人のドイツリート専門の人と共演したけど、頭でっかちで音楽とは呼べないよ」みたいなことを聞かされます。私の場合フリーダムなスタンスなので苦労はないし楽しくも共演できますが、このように考えの違う日本人からは厳しい批評を受けてしまうことも随分ありました(笑)。やっと最近世の中が変わってきて、音楽界もフリーな雰囲気になってきましたね。良いことです。だってさ、おなかが痛かったり特に頭痛のときなんて、どんなに自分がこだわっている大好きな音楽にだって、耳をふさぎたくなるでしょ。絶対的なものだったら、どんなコンディションの時も同じに聴こえるはずですものね。その日その日の自分の気持ちや状態を素直に語りかけてくる、そんな演奏家が大好きですし、そんな演奏家になりたいといつも思っているのです。

斎藤雅広(ピアノ)

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